民事信託(家族信託)

財産承継についてお悩みの方、民事信託(家族信託)の検討はいかがでしょうか?
民事信託(家族信託)とは、近年テレビや雑誌等でも紹介されている、新しい財産承継の制度です。

人は誰しも老いるものです。御自身の現在の生活、これからの老後の生活に、不安や心配を抱えておられる方はたくさんいらっしゃるでしょう。

逆に、高齢に差し掛かった、または高齢のご両親のことについて、心配や不安を抱えておられるご家族の方もたくさんおられるでしょう。不安や心配を抱えたまま、いざとなってから、「こうしておけばよかった。」と後悔する前に、対策を講じてみませんか。

1.認知症対策としての民事信託

もし、お父さんが認知症になってしまい判断能力が低下してしまったという場合を考えてみましょう。

お父さんを介護施施設等に入居させるためには、かなり高額な費用がかかることが通常です。
そのため、お父さん名義の自宅を処分して、入居費用に充てなければならない場合もあるでしょう。

このような場合、たとえ介護施設入居の費用に充てるためであっても、お母さんや子供がお父さん名義の自宅を勝手に売却することはできません。
家庭裁判所に対し、成年後見人の選任申立をし、選任された成年後見人がお父さんの法定代理人として、自宅を売却するという手続きが必要になります。

成年後見人制度には、成年後見人制度でしかできないメリット(身上介護面、身分法上の行為等)もたくさんありますが、次のようなデメリットもあります。

  1. 申立から成年後見人が選任されるまで、通常一定の時間がかかります。
    さらに、居住用の自宅を売却するためには、別途家庭裁判所に申立て、その許可を得ることが必要です。
    そのため、すぐに現金化できなかったり、売却のタイミングを逃すおそれがあります。
  2. 財産額が大きい場合や家族で争いがある場合等では、専門職後見人が選任されることがあります。
    そのため、報酬が発生し、コストがかかります。
  3. いったん成年後見人が選任されたら、本人が亡くなるまで、正当な事由なく辞めることはできません。
  4. 成年後見人は、家庭裁判所の監督に服し、定期的に財産状況等を報告しなければなりません。

民事信託を利用するとどうでしょうか。

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①お父さんが元気なうちに、お父さんを委託者兼受益者、子供を受託者として、民事信託契約を締結します。
  1. お父さんが元気なうちに信頼できる子供に財産管理をまかせることができます。
  2. お父さんが認知症になっても、成年後見人制度を利用する必要はありません。
    そのため、成年後見人の申立費用や専門職後見人に対する報酬も必要ありません。
  3. 自宅売却の家庭裁判所の許可も必要ありません。受託者である子供が信託の目的に従って任意に売却することができます。
  4. 家庭裁判所への報告義務もありません。
  5. 受託者監督人を設けることによって、受託者の暴走を抑止することもできます。
  6. 受託者の報酬を無報酬とすることもできます。そのため、ランニングコストもかかりません。
    受託者の報酬の手当てとして、受託者の相続分を多くしたり、特定の不動産・動産を遺贈することもできます。
②アパートや駐車場の経営をされているお父さんが認知症になり、判断能力が低下してしまったという場合。

認知症で判断能力が低下してしまったお父さんが、新たな入居契約や修繕契約をすることはできません。
だからといって、お母さんや子供がお父さんに代わって、入居契約や修繕契約をすることもできません。
①と同じように選任申立をし、選任された成年後見人がお父さんの法定代理人として入居や修繕の契約をする事になります。

2.障がい者等の支援対策としての民事信託

 高齢、または高齢に差し掛かったご両親に、障害をもった子供や引きこもりの子供がいる場合を考えてみましょう。

 ご両親にとって、自分たちが死亡した後の自立生活が困難な子供の生活・将来について、とても心配されていることでしょう。

 たとえ、一定の財産を残しておいたとしても、自立生活が困難な子供がこれを適切に管理・運用することは難しいでしょう。

 さらには、もし、子供に相続人がいない場合には、残された財産は国庫(国)に帰属してしまうという問題も生じます。

民事信託を利用するとどうでしょうか。

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お父さんを委託者兼受益者、他の兄弟姉妹の一人または、親族の一人を受託者として民事信託契約を締結します。
さらに、契約の中身で、二次受益者を障害をもった子供や引きこもりの子供としておきます。
  1. 受託者である兄弟や親族が、信託目的に沿って、信託財産を一次受益者であるお父さんのため、管理運用します。
  2. お父さんが死亡後も受託者は、二次受益者である障害をもった子供や引きこもりの子供の生活に支障がきたさないよう、生活費や施設の費用等をします。
  3. 二次受益者が死亡した場合に備えて、三次受益者や帰属権利者として兄弟姉妹や親族を指定しておくこともできますし、お世話になった施設等を指定しておくこともできます。こうすることによって、相続人がいない場合でも、相続財産が国庫に帰属することを避けることができます。

このように、三次受益者までも指定できることが「遺言」と大きく異なる点であり、民事信託の特徴・利点といえます。
「遺言」では、相続人を指定することはできますが、相続人の次の相続人を指定することはできません。

3. 事業承継型民事信託

中小企業のオーナー社長が、まだ経験は浅い後継者である長男に段階的に経営を引き継がせたいと考えている場合や自分が認知症等で判断能力が低下した場合に備えておきたいと考えておられる場合も民事信託を使うとスムーズな事業承継ができます

民事信託を使わず、所有株式を生前贈与する場合
現在の株式の時価が安い場合には有効ですが、時価が高い場合、後継者に高額の贈与税がかかる可能性があります。
民事信託を使わず、後継者が株式を買い取る場合

後継者に多額の資金調達が必要になる場合があります。
帳簿価格より時価が高い場合には、オーナー社長側に譲渡所得税がかかります。

民事信託を利用するとどうでしょうか。

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オーナー社長を委託者兼受益者、後継者を受託者とする民事信託契約を締結します。
  1. 後継者に資金調達や贈与税の問題が生じません。
  2. オーナー社長に譲渡所得税の問題が生じることもありません。
  3. 後継者が経験が浅く心配な場は、信託契約の中で指図権者として、委託者であるオーナー社長を指定することもできます。
    により、株主総会の議決権の行使は、指図権者であるオーナー社長が受託者である後継者に指図することができます。
  4. 種類株式を発行して、人事権や重要事項の決定権をオーナー社長に残すこともできます。

民事信託を利用するとどうでしょうか。

上記は、民事信託(家族信託)の典型的な事例を簡単に紹介したものにすぎません。
民事信託(家族信託)は、委託者の想いを信頼できる受託者に託す制度です。
実際に民事信託(家族信託)を利用する場合、各々の方の事情に応じて様々なスキームを考えていく必要があります。
民事信託(家族信託)は、契約内容でかなり自由かつ柔軟な設定ができるようになっています。
財産承継についてお悩みの方は、是非一度ご相談ください。

 (一社)滋賀県財産管理承継センター社員

 (一社)民事信託推進センター社員